前回は「Sticky Fingers」について書いた。
私に取っても最初に買ったストーンズのアルバムという意味でも思い入れは深かった。
先日たまたま立ち寄ったディスクユニオンにアナログ盤のジッパー付きを発見し家に連れて帰った。このアルバムだけでも5枚(アナログ・CD・配信データ含む)もある。もはや変態だ(笑)
今回紹介するのは「Tattoo You」です。
個人的にはCDと配信データを所有しております。配信データは2021年に発売されたスーパーデラックス盤の事だ。このスーパーデラックス盤のシリーズ、最近の流行りなのか、オリジナル盤にプラスしてアウトテイクスと、当時のライブ盤をくっつけて、豪華写真集を挿入するという商売方法だ。価格も20,000円前後と若い世代を無視した、もはや50代以上のお金に余裕のある世代にのみをターゲットに販売。純粋にストーンズの80年代の名盤を聴きたいという層には向いていない。ストーンズ好きのワタクシでさえ、価格が半値以下になる配信(iTunes Store)で買っている。もう数万円を掛けるのに躊躇いがあるのだ。
この豪華仕様(スーパーデラックス仕様)は、「Sticky Fingers」「Tattoo You」「Goats Head Soup」あたりが有名。気合いは入ってんねんけどね、もう普通に聴かせてよって感じです。20,000円は高いっす。せめて10,000円以内におさまるようにしてよ。
「Tattoo You」
1.Start Me Up
まずは冒頭を飾るのに相応しい、超キャッチャーなリフから始まる名曲。今でもライブでの定番曲でもあります。さあ!行くで!ってな感じで、ストーンズはまだまだやれるぞ!感が、メラメラある楽曲。MTVもこの年あたりから放送された?んかな。ミックもキースも38歳あたりの年齢。まだまだ身体も動くし頭もキレキレ。何より野心がメラメラでしょう。キースも薬まみれの身体から抜けた印象のある時期。ミックの80年代は毎朝ランニングして鍛えている時期だったような。めちゃアメリカを押し出したステージで、アメフトルックの衣装もあったっけ。映像は「Let’s Spend the Night Together」や「Live in Leeds1982」でご確認ください。「Let’s Spend the Night Together」は映画記録として残されたものなので作りはいいです。「Live in Leeds1982」はアーカイブシリーズなので、引き算しながら観てください。しかし音源の生々しさはリーズの方です。なのでCD付きのBlu-rayを買うのがベストかな。
2.Hang Fire
2曲目もStart Me Upの流れを汲んだ曲だ。コーラスから始まってゴリゴリ攻めていきます。2分ちょっとの曲なのが更に良さを増します。もう「Start Me Up」と「Hang Fire」ですよ。この2曲でこのアルバムの印象が出来上がってます。
3.Slave
ここからヘビーなサウンドに転換します。ミックのファルセットボイスが曲の構成を際立たせます。しかし歌モノっていう感じはないかな。6分半もある曲で、楽器パートのソロが随所に出てくる、このアルバムではコンセプト的に異色なのかなあって感じです。
4.Little T&A
キースがメインを取る曲です。あまりライブでやらへんかな。これも聴きやすくっていいんですよ。「Happy」や「Before They Make Me」もいいけど、このあたりの曲ももう少し聴きたいかもです。
5.Black Limousine
一気にブルースの世界にようこそ!って感じです。ロニーは共作としてクレジットされているけど、おそらくロニー単独の曲なんでしょう。渋くって好きな曲です。
6.Neighbours
さあ、「Start Me Up」「Hang Fire」に続くノリノリなストーンズナンバーの登場です。ストーンズが好きじゃない人でもノリに乗れる作品です。ポップでキャッチーです。ジャズのソニー・ロリンズが参加!
7.Worried About You
ノリノリの「Neighbours」の後には、しっとりとした名バラード。この時代のミックはファルセットを多用しつつ曲の雰囲気を素晴しい形で作っていきます。すでに1977年の「エルモカンボ」のライブでも演っており、その時代のストーンズの常連曲になっていたんかなと。リリースタイミングを逸した曲を「Tattoo You」でお披露目した感じか。
8.Tops
ミディアムテンポの、これまた美メロな曲です。くどさが無くて本当に聴きやすい。
9.Heaven
またまたファルセットなミックジャガー。好き嫌いが分かれる曲かなあ。わざわざ入れなくてもよかったような気もする。
10.No Use In Crying
Heavenに続いてメロウに攻めていきます。この曲もどうなんだろう?入れる必要はあったのか?穴埋め感のする曲かなあ。
11.Waiting On A Friend
これはアルバムのラストを飾るにはもってこいの名曲です。PVの雰囲気も好きでよく聴く曲の一つです。傑作やね。
アルバム全体がポップで聴きやすい作品です。確か「Goats Head Soup」から「Emotional Rescue」までのボツ作品…というと聞こえが悪いが、当時のアルバムコンセプトから外れた作品の寄せ集めらしいです。作った時代も録音した時代もバラバラなのを、ボブ・クリアマウンテンがしっかり統一感のあるアルバムに仕上げていったなあと。それ以降、彼は現在までストーンズの信頼するパートナーになりましたよね。
で、ここからデラック盤に入っていた曲ですが、どれもキャッチーで佳作揃いなんですわ。なので、ストーンズ聴きたい人は、このアルバムは2枚組の方を買っても楽しめると思います。1枚だけの方を聴く方がお安く済むとは思うけれど、まあもう1枚おまけが付いたって感じで聴いて見てください。損はさせませんよ。
で、20,000円するスーパデラックス盤の方にはライブ盤が付いてきます。あの有名なウェンブリーアリーナのライブです。「Tattoo You」の後に発売された「Still Life」の完全版です。この作品も有名な作品で全米をでっかくツアーを周りまくった作品の一つです。このライブ盤あたりが、最後のストーンズのライブ作品かなあと思ってます。2023年に発売された「Grrr!」は良い出来でしたが、もう90年代以降のライブ版はちょっとハマる事はないかなあと。どこを切り取っても、同じ曲、同じアレンジって感じで、ちょっと聴いてられなくなってきます。アーカイブシリーズは、70年代、80年代のこの「Tattoo You」時期までだと思います。
これはオリジナル・スタジオアルバムにも言えるかなあ。決して90年代以降のアルバムが悪いというわけじゃないんやけどね。リアルタイムで聴いてきたものと、過去を辿って聴いたものの違い?なんか考えましたが、やっぱり良い時代は1971〜1981ぐらいだと。この時代はブートでいいライブ盤が、もはや格安で売ってます。今後はひっそりとこのあたりも紹介できたらなと。
また1971〜1981までのアウトテイクスの曲も豊富にあります。手軽に聴くならYouTubeで検索したら良質な音質で聴くことも可能です。あの曲が、こんなアレンジで作られ世に発表されたんだなと想いながら聴くと楽しめます。ワタクシは、アウトテイクスが大好物なので聴き込んでしまいます。これもオリジナルを聴き込んだから、アウトテイクスも楽しめるものだと思います。なので、やはりオリジナル・スタジオ盤をしっかり聴き込むのが本来の在り方だと思います。
「Tattoo You」の世界をたっぷりお楽しみください。
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