スライダーズのスタジオアルバムとしては最後の作品です。
しっかり作り込まれているし、最後のアルバムとして相応しい出来です。
決してやっつけ仕事じゃないし、契約が残っているから仕方なくアウトテイクスの拾いもんを集めた作品でもないです。
最後にこんな素晴らしい作品が聴けて最高でした。
前作の「WRECKAGE」にあった重さは抜け切っていて、リラックスした作風になっています。
個人的にスライダーズの曲は、日本語タイトルの方が傑作が多い気がします。
このアルバムも10曲中の4曲が日本語タイトルです。
私の一番好きな「Screw Driver」も6曲が日本語タイトルです。
理由、原因は分かんないけど、ハリーの作る詩、特に聴かせる詩を作る場合は日本語のタイトルになるんやと思います。
このハリーの日本語タイトル曲は、このブログでも書きまくっていますが、情景が頭の中で描かれて感情のスイッチに飛び込んでいく曲が多いです。
01. On The Road Again
02. Can’t Get Enough
03. Knockin’ On Your Door
04. 虹を見たかい
05. Catch a Fire
06. 愛の痛手が一晩中
07. WANNA DANCE TONITE
08. BIGMOUTH
09. 手ブラで来いよ ~センチメンタルジプシー
10. 夜毎悩ましい街で(Drift away and…)
1曲目はゴリゴリなロックから始まります。
2曲目なんかは、土屋公平のファンク路線が聞こえてきます。
このファンク路線が今後のスライダーズを分裂させた要因になったのかと勘ぐります。
「LAST LIVE」でも、このファンクが押し出された作品があったりで、
この路線はハリー、ジェームス、ズズには合わへんやろな…と当時思いました。
解散するには仕方がない音楽性の違いは十分にあったんやなと思います。
長年やってきてこればかりは仕方がありません。
この数年後、解散の決断をします。
ロッキングオンを読む限り、土屋公平が脱退の意向を最初に示したと。
それに対して村越宏明は熟考しつつも、公平が脱退するならこれで終わりという決断に至ったと。
土屋公平は自分が脱退しても、スライダーズとしては続けて欲しいという気持ちがあったようです。
これは公平の個人的な思いではあったけど、結果は解散という決断をハリーはすることとなりました。
土屋公平が悪い訳ではない。
こんなにリリースペースが遅く、目新しい曲にもチャレンジできない環境にジレンマがあったはず。
ハリーのペースでは、公平の新たなサウンドにチャレンジできなくなっていたんだろうなぁ。
スライダーズの曲のアレンジを小山田圭吾にしてもらいたいなど、積極的に違うアレンジャーを採用したがった土屋公平は正しい。
次のスライダーズのサウンドを見て聴いてみたかったんだろう。
けれど現実は違った。仕方がない。次に進みたかった土屋公平は脱退という決断をしたのだ。
「LAST LIVE」を聴けばよく分かるだけど、このライブ、ラストだからしっかり聴けるけど、なんかバラバラだし全然良くないんよね。もっと最後だから盛り上げって終われば良いのに、土屋公平のサウンドアプローチが高まった演出になっていて、あまり聴く気になれない作品に終わってしまうという。
終わりを迎えるバンドとしては充分なほどに条件が揃っていました。
もうこれ以上は続けられない雰囲気が漂っていたんだと思います。
音楽性の違いは顕著だったし、彼らの生活スタイルもどんどん変わって行ったんだろうと思います。
吉祥寺から出てきたバンドが、あれよあれよと武道館でライブをするまでになり人気も高まり、楽曲のクオリティも申し分のない作品に仕上がる。まさに頂点に達していました。
「On the road again」
明日を待てずに出ていくのか!
少しはマシになったかい?
幻にオサラバするのさ
もう先(未来)しか見ていない言葉に感動しかない。
中途半端な人生の応援歌ではない。
ハリーの当時の心境は分かんないけど、こんなに励まされる曲が1発目にくるのが嬉しかった。
このアルバムの雰囲気は、こういった楽曲の中で蘭丸のファンキー路線が絡みます。
けれどやはりハリーのテイストや雰囲気が際立ちます。
「虹を見たかい」
「愛の痛手が一晩中」
「手ブラで来いよ ~センチメンタルジプシー」
「夜毎悩ましい街で」
もう日本語タイトルの秀逸なこと!
ずっとこのままの路線で継続できるのでは?
なんて思いますが、そこはバンド内の亀裂は修復できなかったんだろうなあ。
このアルバムはラストアルバムですが、一聴した感じはそんな気分にはさせられません。
バラエティに富んだ作品ですし、オールドのスライダーズファンも楽しめる作品です。
蘭丸がファンキー路線に走った事を新鮮に感じられるか、何やってんの?って気分になるかで作品の良し悪しが変わってくると思います。
けれど基本的にバンドのイニシアチブを取っていたのはハリーだったんやろうな。
どう聴いてもハリー作になっているからね。
いくら蘭丸が主張しようが、このスライダーズというバンドは村越宏明なんだと感じました。
最後の最後までスライダーズは安定して傑作アルバムをリリースし続けていました。
このラストアルバムは「天使たち」「BAD INFLUENCE」「SCREW DRIVER」が好きな人があらためて聴かれても違和感があるかもです。
けれど彼らが最終的な着地点を見つけた作品であることは間違いありません。
だってこの作品で終えたのだから。
ストリートスライダーズ!
こんな泥臭くて、野心が見えなくて、好きなロックとブルースだけ奏でていたバンド。
もう現代では出てこないんじゃないかな…
コメント