スライダーズのセカンド・アルバム「がんじがらめ」
1,981年12月1日リリース。
もう前回のブログでも書いたんだが、何なのよこのジャケットのセンスは!!(笑)
このアルバムのジャケットセンスは3作目の「JAG OUT」まで続きます。
ファーストアルバムにあった青臭さは自然に抜け始めた感がある。ただしファーストとセカンドは9ヶ月しか経っておらず、レコーディング時期がどうなっていたかは不明だが、少しずつ渋みが増してきている。アルバム全体のイメージも重く渋い。この先、このバンドをどう売り出そうとしていたのは不明であるが、アイドル的な要素もないし愛想良くできる雰囲気もないし、インタビューで気の利いたことも言えないし、キャッチーでポップでCMソングに使えそうな曲もない。このセカンドアルバムは前作より重くなってきているんで、更に大衆からは受け入れられそうにない作品に仕上がった。当時の雰囲気は分からないが、やはりTV受けして、雑誌受けして、居心地のいいものが好まれていた時代だったと思う。そんな時代にこのヘビーな作品をリリースしたEPIC SONYも英断だったのではないか。
1.Toa・Lit-Tone (踊ろよベイビー)
下から下からくるサウンド。しっかり楽器としての音を鳴らし始めていて聴いていて心地が良いのだ。心地がいいし、やっぱり格好いいんよね。楽器をしている人が聴いたらハマりそうな楽曲です。曲の中に歌詞らしい歌詞はない。ほぼインストとして聴いてもらいたい。バンド内での個々の演奏能力が高まってきた瞬間でしょう。こういう曲が最近のロックバンドにはないよなあ。オープニングでこの曲を持ってくるのは相当の自信があったのか?思いつきか?でもこのアルバムの出だしに相応しい曲だ。
2.So Heavy
2曲目からは一気にストーンズナンバーと連想させる曲に突入。
「heavy、heavy、she so」これは「she’s so cold」のオマージュか。まあ元ネタな曲ではあるけど「熱い」と「寒い」の対局を成した作品だな。本家の「she’s so cold」は終始穏やかに済ましているが、「So Heavy」ではしっかりギターソロも聴けてご機嫌なナンバーに仕上がっている。中盤で蘭丸とのコーラスの掛け合いが印象的で、蘭丸はどちらかといえば高い声の持ち主なんでキースリチャーズの声を再現できないんやけど、この蘭丸のバッキングがこの先のスライダーズの曲を彩っていくのだ。
3.(Nobody can) Catch Me
このアルバムから好きなことをやらせてもらえたんじゃないだろうか?とてもヘビーな曲で決してキャッチーな曲ではない。アルバム全体で、特にA面の中盤を占める曲をこのテンポで収めるのは相当な自信があったんやろな。前作では80年代のストーンズがベースにあったと思うんやけど、この作品は70年代中期「Goats Head Soup」「It’s Only Rock’n Roll」あたりの曲調に変わってきている。本来このあたりの時代の曲は大好物だったと思うんで、やりたいことを深くできた作品だったのかもしれない。ただし少し余分なアレンジもあったりで、この辺は今後改善されていきます。
4.とりあえず,Dance
ストーンズで言えば1,976年作品「Black And Blue」。しっかりゴリゴリとしていて本当に気持ちのいい作品だ。ハリーのソロでもやんない曲やなあ。終盤に蘭丸が「とりあえずdance」というコーラスがいいんよね。けれど少し口説いところもあるか。「Dance」というキーワードで言えば、ストーンズの「Dance(part1)」か。でも曲調は全く違うので言葉だけ頂いた感じかな。あ、「Dance little sister」か?
5.道化者のゆううつ
スライダーズのベスト曲です。彼らは「のら犬にさえなれない」「道化師のゆううつ」「ありったけのコイン」など、スローな名曲を携えているが、その中でも代表曲の一つです。途中のコーラスは「Fool To Cry」か。とにかく歌詞が絶品です。この曲を聴きならが酒がいくらでも呑める。酒とタバコ、そしてロックンロールがあれば救われるんだと言っている感じがしてならない。酔いどれオイラの悲しい呟きさ… 楽曲の完成度から言えば、現代(2023年)で、この雰囲気と歌詞の世界観を出せるバンドはいない。断言できる。今のミュージシャンを悪くいってるんじゃない。酒、タバコ、ダメな自分…そんな哀れな自分を唄うバンドはいない…。。。 こんな世界観を聴く側が求めていないのか。
6.Tokyoシャッフル
B面の1発目を飾るのはご機嫌なロックナンバー。この辺りの曲もあまりハリーのソロではやんないかな。ミドルな曲調で、ゴリゴリと押し通してくれる。
7.鉛の夜
ゴリゴリなロックの後には、重くメローな曲に展開する。「鉛の夜」このタイトル通りの曲だ。この曲なら今のハリーのソロでもやってもおかしくない曲だと思うが。ぜひ実現させて欲しい。ストーンズ言えば60年代後期の作品にありそうな曲か。鉛の夜だもんな。どんな意味があったのか。鉛=重い思い。そんなイメージでいいんだろうか?しかし、まだまだハリーのヴォーカルもこの世界観を歌い切れていない。この若いハリーの声では曲の雰囲気には合わないんだな。だからこそ、今のハリーのソロで演ってほしいよな。
8.Dancin’ Doll
この曲は今でもハリーが好んでやる曲だな。どんな基準で選んでいるのか分からんが、少しキャッチーさがあるのか?う〜ん、分からん。ミドル&メロー、ストーンズの70年代中期から後期にあった曲調です。ファーストからそうだったけど、ジェームスのベースが心地いいのよ。特にメローな曲ほどにそのベースラインが格好良くてね。からみつくギターばかり聴くのではなく、ぜひベースも聴いてくだされ!
9.マンネリ・ブギ
ここからご機嫌なロックになります。タイトルが「マンネリ・ブギ」って笑。永遠のマンネリと言われたストーンズに対する、何というかスライダーズもそうだけど、この路線をずっと続ける意志を表明している歌詞か。早いテンポでグイグイと押し切ります。このアルバムは全体的にヘビーさが売りなんですが、この曲はアルバムでも浮き気味なんやけど、アルバムの雰囲気を壊すことはなく自然に通して聴かせてくれます。
10.SLIDER
出だしのギターリフからして、ゴリゴリです。スライダーズの代表曲の一つ。ワタクシの中ではスライダーズ版のブラウン・シュガーって位置付けです。曲自体はそんなに似ていないんやけどね。単純に格好いいのよ。「Slider」っていう単語が格好いいよね。スライドギターが満載な曲で、ほんと滑りまくりな曲で大好きな1曲だ!「抜け出せないぜ!滑り込んだら!」
まだまだ若かった彼らが20代に作ったアルバム。もう充分にベテランの域にある風情がアルバム全体に醸し出されています。若さゆえの青さは前作より大分に抑えられていて聴きやすく改善されてるやん。ホント今聴いても全然気持ちよく聴けるロックナンバーがそろっています。スライダーズのアルバムを最初の聴くのにはベスト盤が相応しいけど、初期の頃のこの1枚って言われても…ぶっちゃけありません。これら3作品は青臭さ、青白さがあり、徐々にその若さの部分が削ぎ落とされていきます。そして円熟されたスライダーズが聴けます。そんな活動期間が長くないんで、気に入った方はゆっくり後追いして欲しいです。
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