空き家のはなし

雑記〜日々の泡立ち

両親が特養に入り、実家が空き家になってしまった。

築53年の家。

屋根瓦は直していた記憶はあるが、その他は手付かずだったと思う。

父は大工だったので、少しの修復ぐらいは自分でやっていたかもしれない。

しかし実家は朽ち果ててしまっており、この家をどうするか考えないといけなくなった。

このまま放置してたらご近所さんからクレームも来るだろう。小動物のすみかになるのも嫌だし、誰かが居ついたらと思うと。。。

 

空き家。誰もいない家ってのは不気味だ。

うちの家の周りで空き家はない。うちだけが異質な感じで空き家感を醸し出す訳にはいかない。

すでに半世紀をこの街でこの町内で暮らしていて、町内の古株の方達には我が家のことは理解してはいただいてはいる。

しかし迷惑を掛ける訳にはいかない。何とかしないと。

考える上では下記の3点

  1. 売る。
  2. 貸す。
  3. 住む。

めちゃシンプルな答えだ。

そこで空き家対策をしている不動産屋に飛び込んだ。

上記の3点のことを相談しながら話を進めて行く事にした。

しかし明確な答えは導き出せなかった。

 

ほんと悩んだわ。

楽なのは「売る」だなあと思っていたが、うちの家って高級住宅街の中にある。うちはでかい家ではないが、憧れて越してくる人がたくさんいる。その中で一軒だけ異様な雰囲気をなす古民家が我が家って感じなのだ。

だからこそ「売る」ってのは勿体無い?て気分がしていた。自分の給料では絶対に買えない土地の価格。

父に相談したら「売るな!住んでくれ!」だった。父もその祖父に譲り受けた土地だったから売るのに抵抗があったようだ。何となく気持ちは分かる。当然、愛着がある家だから残しておきたい。また高級住宅街で住むには何不自由のない環境。近くに駅もあり、スーパーもあり、警察もあり、何でもあって、かつ治安もいいのだ。憧れて大金を注ぎ込んで住んでくる人がいるぐらいなのだ。

 

「貸す」。これもあったけど、父も兄も反対した。父も兄もワタクシ家族に住んで欲しいと。貸してトラブルになるのも嫌だし、現状のまま貸すにはボロ過ぎるのでどちらにしてもリフォームをしないといけない、って事はお金もかかるしなと。

最後に残るは「住む」って選択だった。

上記に挙げているメリットや、身内の声から聞こえてくる「住んでくれ」に耳を貸すことにした。しかし住むにしてもリノベーションせんと。子供は小学1年生。転校する事にもなるし。。。

 

最後に大きな問題が。

実家は旗竿地で「再建築不可物件」なのだ。再建築不可物件を大きくリノベするのは違法行為になる。更地にして一から立て直すのは不可。ベースを残しながら少し手を付ける程度ならOK。

そして銀行からは再建築不可物件の場合は、住宅ローンを有利な金利での貸し出しは不可とのこと。

大掛かりで数千万円掛かるリノベーションをした場合、低金利の住宅ローンは適用されない。なのでキャッシュならば可能ではあるが。。。ワタクシのような一介のサラリーマンでは無理な話であった。。。

 

行政が配る「市民しんぶん」ってのが毎月ポスティングされている。

その中に「空き家相談」てのがあった。

直ぐに実家に住むのには気落ちの整理もあったので、行政の補助金を使って古く朽ち果てた箇所を一時的に修繕して、その場をしのぐことを考えた。

しかし行政の担当員は1年間誰も住んでいない状態であれば補助金を出すけれど、まだ1年未満だから出せないと返答された。担当員曰く一度その実家を見せて欲しいと。

これは京都市が空き家対策の一環として、空き家で困っている人に適切な診断をおこない空き家を有効利用してもらうために作られた組織のようだ。京都市も年々増える空き家に対し相当苦労しているらしい。

 

コロナ禍が真っ只中な2020年4月。

京都市の役所の担当員2名、建築家さん1名、不動産会社1名の計4名が実家に集結した。

うちの家の周辺のプレミアム感に関心があったようで、そこから話が進んで行った。

しかし家を観察すると、相当に痛んでおりリノベーションは必須とのこと。

相談員4名の合致した意見は「売る」のはなし。「貸す」にしてもリノベ必須。うちの家族構成ならリノベして「住む」のが一番であると。

ここまで言われたら「住む」に気持ちは傾き、ではどうすれば良いのかに考えが傾いて行った。

普通のリフォーム会社なら、お手軽なプランを考えて持ってきてくれるかもだが。。。

そこは役所の方なんで無理に業者を紹介してことを済ます感じは一切なく好感が持てた。

 

うちの嫁さんの実家は建築家さんに建ててもらった家に住んでいる。

ワタクシも一度、建築家さんに設計をしてもらおうと企てたことがあったが、予算で合わなかった事や理想的な土地がなかったので断念した経験がある。

今回の相談員の中に建築家さんがいた。その建築家さん、うちの家の近くに事務所があるようだ。年齢もワタクシより少し上な程度。作品をHPで見たら家のテイストも好みにあっていた。

なら、これも縁があったという事で思い切って任せてみようかと。

 

再建築不可物件。

想像以上に色々と制約がある。

平地にして、一から立て直す事は出来ない。

また旗竿地の形状になっているので、予算は普通の家より重くのしかかる。

ワタクシの年齢も50代になろうとしており、そんな無理な長期ローンは組めないし、組みたくもない。

できる範囲の中で予算内に収めてもらいつつ、シビアな条件の中でアイデアだけはどんどん出してもらい、普通の家とは違った個性のある家に蘇らせてもらう。そうとうに我が儘な条件を叶えていただいた。

 

建築家さんとは何度も何度も打ち合わせをおこなった。こちらの理想と建築家さんのスタイルを融合させる瞬間だ。建築家さんも拘りがめちゃくちゃあるし、こちらも妥協しない面もあるので打ち合わせは相当な時間を費やした。

家の造りの好みは嫁の意見を尊重し、ワタクシは予算面に四苦八苦した。銀行は基本的に、再建築不可物件に関しては通常の金利で住宅ローンを組んでくれない。金利が通常0,5%前後が1,9%まで跳ね上がる。1%以上も上がる金利は月々の返済に大きな差を生んでしまうのだ。こればかりは仕方がない。当然違う銀行にも相談したが、地元の信用金庫が一番安く相談にも乗ってくれた。

 

そんなこんなで、銀行にも融資がおり、予算も建築家さんと打ち合わせを重ねまくって削れる所は削り、妥協しない所はしない、かつ家族も満足できる家が、完璧にリノベーションされた。これは作品だ!と言える家が誕生した。

元ある家の構造はぶった斬るようにされ、全く別モノのような家へと変貌していった。

来る人全てか「おしゃれ!すごい!」と言ってくれる家だ。

外観は再建築不可のため一切工事はできず、中身だけを完全にフルチャンジさせた。

 

うちの実家は風呂がなかった。

いつも近所の銭湯に行っていた。小さい頃からなぜうちには風呂がないのだ!って思っていた。

けど何となく過ごしていく中で、そんな些細な事は忘れていった。

今回、リノベーションして風呂が我が家についた!

感激だった!

泣き母はいつも銭湯にいって、風呂屋のコミュニケーションに悩んでいた。

毎日毎日、銭湯に行くとその常連と上手くやらないと風呂に入れない掟でもあったようだ。

晩年まで風呂屋の揉め事に悩まされていた。

ごめんなお母さん。

亡くなってから家をリノベして、まさかの風呂まで作ったよ!

あんなに風呂について悩んでいたのが、今やノンストレスになったあわ。

 

これから終までこの家にいたいと思う反面、経済的にその先も保たれるかは分からない。

売る時がある可能性もあれば、死ぬまでい続ける可能性もある。

今の時点でその判断は出来ない。

けれど早い将来にが今後の展開が見えてくると思う。

 

青春時代は楽しかったなんて、ノスタルジーに浸らずにこれからも未来だけ見て進んでいきたい。

 

 

 

ひろさん

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好きなこと好きなままに書いているブログです。
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